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院長の歯科コラム

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歯の移植

インプラントを検討する前に 歯の移植

歯を失う事は大変に悲しい事です。
当院でも、歯を失う事に関するトラブルのご相談は数多くあります。

歯を失うデメリットについては



細かく言えばもっとあるのですが、以上のようなものがあげられます。

さて、一般に歯を失う確率が最も高い歯は第一大臼歯(6歳臼歯、前から数えて6番目の歯)と言われています。
それは、最も虫歯になりやすい歯(※1)であり、歯周病に対しても通常の歯よりリスクがあるからです。

1本の第大臼歯が抜歯に至るケースには以下のような流れをとると言われています。

また、第一大臼歯は歯周病に関してもリスクがあります。
歯の根が複雑な形態をしていますので、歯周病の治療が難しく、
急速に進む特殊な歯周炎(歯周病の分類のひとつ)では、第一大臼歯の周りの骨の破壊が多く進む特徴があります。

さて、以上のようなヒストリーで抜歯に至り、歯を失う事で機能や審美性に対する問題が出来ますので、
失った歯をなんとかして作る治療が必要になります。
単純な虫歯の治療と比べると難易度はぐっと上がり、治療の選択肢も増えます。

※1 人間の永久歯の中で1番早くはえます。6歳くらいではえますので、
食事や歯ブラシのコントロールが効きづらく、また、歯に深い溝がありますので、
唾液の抵抗力や歯ブラシの効果が効きづらいため、虫歯になりやすい歯といえます。

歯を失った時の治療法

実際には、歯を失った場所や、本数によって治療法は様々ですから
ここでは第一大臼歯1本を失ったと仮定してお話ししたいと思います。

  • ブリッジ
  • 日本では、現在最も広く用いられる方法でしょう。

    両隣の歯を大きく削り人工の歯を連結したものを、セメント固定する事で固定します。
    橋を渡すように見えるのでブリッジと言われています。
    簡単で比較的安価(保険適応できます)に治療できることができます。
    しかし、本来であれば治療する必要なない歯を削る事で、新たな抜歯リスクを抱えることになりますし、
    また歯が連結されていますので、歯ブラシがしづらく、また3本の歯を2本の根で支える必要がありますので、
    負担過重になりやすく歯周病に対してリスクを抱えます。


  • 義歯
  • 1本だけの義歯というものもありますが、取り外しの煩わしさから使用を断念する方が多いです。
    保険適応出来ます。多数の歯を失った方向けの治療法といえます。

  • インプラント
  • 根歯を失った場所に人工の根をつくる方法です。
    最近は幅広く使われるようになってきました。チタン製のスクリューを顎の骨に結合させて作ります。

  • 外科手術をする必要がありますが、
    最近では非常に小さな傷や痛みで手術をすることも可能になり、非常にいい方法だと思います。
    なにより、隣の歯を削る必要がないという事は、ブリッジに比べると大きなアドバンテージがありますね。

デメリットは、近年爆発的に普及したせいで、使い方を間違ったり、メンテナンスの重要性まで
十分にお伝えしてないせいで、ロスト(インプラントが抜けてしまう事)などのトラブルが増えてまいりました。
マイナス面が多く取りざたされていますが、私個人としては
抜歯以外に方法がないのであれば、失った歯を回復する手段として有効だと思っています。
もちろん、抜歯をしないための最大限の努力をした後のお話しになりますが。

インプラント、所詮は人工物で、かたちあるものはみな壊れます。
使っていくうちに必ず壊れてしまうとは思いませんが、中には数年でかぶせたものが
とれてしまったりすることもあると思います。インプラントのボディー自体が(ネジ部分のことですね)
使えなくなる事はまれで、被せものの交換は数年で必要だと思っていた方がいいと思います。

また、インプラントに限らず歯を長持ちさせるためにはメインテナンスが非常に重要です。
歯は、1日の食事3回、1年で3×365回…1,000回以上も使う、非常に過酷な条件にいます。
仕事に使う道具にはすべからくメインテナンスが必要だと思いますが、
歯やインプラントにも毎日の歯磨き、数か月に1回のかみ合わせのチェック、
歯のクリーニングなどを定期的に受けて頂く事で、
長い期間、歯、インプラントを使って頂けるようになると思います。

所詮は人工物・・・大事に手入れして、長く使ってほしいですね。

  • 自家歯牙移植

  • さて、ここからが本題。
    私の場合、適応可能であれば、まず始めにこの方法を検討します。
    抜歯予定部位に他の部分の歯を移植する方法なのですが、
    日本で抜歯の必要な部位に、親知らずを、同じ日に移植する場合に限り、
    健康保険の適用が認められています。

自家歯牙移植は、古くは1960年代から行われ、インプラントよりも古い歴史があります。
親知らずをなくなった場所に移植することで自分の歯のような状態を回復することが出来ます。

歯の移植はインプラントやブリッジに比べ、色々なメリットがあります。

最大の違いは歯根膜(しこんまく)が存在することです。
天然の歯の根と骨の間には歯根膜(しこんまく)と言われる薄い膜があります。
歯根膜は、噛む力をささえるためのクッションになる、噛む感触を脳に伝えるための受容器になると言った特徴があります。
非常に鋭敏な機関であり、咬合力(噛む力のことです)は歯にとっては大きなダメージがありますから、
強くなりすぎないように感覚を与えて、また多少強く噛んでもクッションになるという働きがあるのです。
インプラントには歯根膜が存在しませんので、咬合力がダイレクトに骨に伝わってしまいます。

また、すべて歯は生きている限り動き続けます。
歯が動く事自体、歯根膜の働きによるもので、どんどん動いていく歯を、長期間動かないインプラントを混在させると、
いつか全体と調和がとれなくなり、手前の歯との間に隙間ができたりすると、インプラントの上の被せものを
交換するなどの必要は出てくると思います。(インプラントのボディ自体の交換ではありません。)
良好な結果が得られた移植歯はほかの歯と同様に移動していきますから、
長期間他の歯と調和させるためには、インプラントに比べて優位でしょう。

さらに、歯根膜には歯周病に対して防御機構があります。
これもまたインプラントにはない機構ですので、移植の方が優位といえます。

メリットの多い移植歯ですが、インプラントに比べますと普及しているとは言い難く、
その理由は、とにかく、とにかく、良好な結果が得るのが難しいからなんです。

良好な結果というのは、

この2つが成功する事にあります。

以下に歯の移植の流れを記載します。

ドナーとなる歯をいかに傷付けないかが成功のキーになります。
移植歯の位置づけも非常に大きな因子で、移植した歯の根がすべて覆われている必要があります。

一般に移植した歯の神経は壊死してしまいますので、根の治療を必要とします。
※若年者の場合歯の神経もつながる場合があります。その場合はここで治療終了です。

移植した歯をよりよい位置にするため部分的な矯正治療を行う事があります。
部分的な矯正は通常1−2カ月で終了します。※保険適応外

きちんとしたかみ合わせにするために被せもの治療を行う必要があります。
ここまでくれば通常の虫歯治療と変わりません。
なるべく精度が高く長持ちするものを選んで頂きたいと思います。

このように非常にたくさんのステップを順序良くクリアする必要があります。

さて、良好な結果が得るための条件に戻りますが、
・歯根膜が歯の根の全体にわたって生きている事のためには、
これに関しては、移植した歯をとにかく傷つけない事、
ドナーをきっちりと移植部位に埋める事
この2つが重要になります。

もしここで良好な結果が得られなかった場合、つまり歯根膜が一部壊死してしまった場合は、

・すぐに抜けてしまう。(当院では5%以下です。)
・ゆっくりと移植した歯の根が吸収して5-10年程で抜けてしまう。
 (10%-50%という研究があります。研究者によって数字がまちまちです。)

という経過をたどります。

くっつきはしたけど、5-10年ほどで抜けてしまう可能性はあるという事なんですね。
それも移植の概念では一応の成功と考えられています。

それをいいと考えるか悪いと考えるかはひとそれぞれなのですが、良好な結果が得られる事の方が多いですし、
5‐10年間でも特に使う予定もなかった親知らずを再利用出来る、
その間ブリッジもインプラントもしなくていい、というのは十分に価値があると思います。
移植歯が抜けてしまったあと、インプラントを検討する事も出来ますしね。
この辺がいかにも日本人的な、もったいないという発想からくるもので、欧米ではあまり用いられていないのが現状です。

次に、歯の神経の治療が成功するという事に関しては、
当院ではラバーダム防湿法を用いて根の治療を行いますので、安定した成績を残せています。

根に大きな感染のない初回の治療は95%以上の成功率があると考えられています。
また、再治療も可能ですから、このステップは私個人としては大きな障害とは思っていません。

シンプルなインプラント治療に比べますと、非常に難易度が高いですね。

以下にインプラントと歯牙移植の違いを表にまとめてみます。
興味のある方は読んでみてください。

自家歯牙移植の違い

  自家歯牙移植 インプラント
適応範囲
ドナーとなる歯が必要になる。
骨の量に対して制限が大きい

骨の量に対しての制限はあるが、
骨を造成する事で、適応範囲を広げる事が出来る。
外科処置 ○1回
2か所同時に行う。

1-3回行う事がある
歯根膜

  • 防御偽機構、かみ心地があります。

×
存在しない

適応能力
歯の移動など体の変化に適応し易い

歯の移動かみ合わせの変化に対応するため、
細やかなメインテナンスが必要です。
歯の矯正
歯の移動をする事ができます。
※一部骨との癒着をおこし移動が
不可能な場合もあります。

インプラント自体は移動しないため、
インプラントの被せものを交換する事で
適応可能な場合があります。
長期安定性
5年生存率とも一般にインプラントより
多少劣ると言えます。ただし、術者の技量により
かなり違いがあります。
移植歯は通常神経が死んでしまいますので、
歯の根が割れる、被せもの虫歯等のリスクは
未処置に比べ、増加します。
骨との癒着を経年的に歯の根の
吸収をおこすことがあります。

5年間機能する割合は90%以上
経年的に骨の吸収が起こる可能性があると
言われています。その骨の吸収が直ちに
機能に影響を及ぼすわけではありません。
成功率
手技は煩雑で難易度も高いため、
成功率は劣ります。

一般にインプラントの方が成功する割合は
高いといえます。
費用 25万円+税 38万円+税

移植歯は最良の結果が得られた場合、インプラントに比べて歯根膜に関するメリットが大きく、
未処置の健全な歯と比べると、神経を抜く、削る事に対するリスクは増加します。

インプラント<移植歯<=処置歯(神経のない歯)<処置歯(神経のある歯)<健全歯
私個人としては、この順に将来におけるトラブルが少ないと考えています。

治療例

1:治療前

Aの歯がたまに腫れてしまう事があるとのこでした。当初はレントゲンでみえる根の先にある
黒い部分が問題と考えて歯を保存するために根の治療を行う事にしたのですが、
土台をはずして良く調べたとこと歯が割れてしまっている事がわかりました。(写真参照)。
割れた破片が大きく、また根の先にも問題もありますので、長期に歯を持たせる事が難しいと判断して、
Bの歯を移植させて頂く事にしました。

2:こちらが移植、根の治療後

移植した歯の周りの骨は完全ではないですが、痛みもなく順調です。



3:移植して2カ月程

かみ合わせの治療のために、矯正をする事になりました。
部分的な矯正でも良いのですが、元々、歯の並びも気になっていた方ですので、全体的に矯正をさせて頂く事になりました。
移植を成功させるため、他の歯よりもかなり深い位置に歯を入れています

4:移植して4カ月程

Bのまわりの骨が少しづつ治ってきています。かなり深い位置に歯を入れています。
歯根膜らしきものも見えてきました。


5:移植後12ヶ月程

ほぼ完全に骨がなおりました、歯の根の周りに見える薄く黒くなっている部分が歯根膜です。
また、深めに移植した歯の位置も改善され、骨の高さもほぼ他の歯と同様の位置です。

ここまでくれば、後は通常の虫歯治療ですから安心ですね。
この方は全体的な矯正治療をするため経過を長くみておりますが、
部分的な矯正治療で歯の位置を修正するだけであれば移植より3−4ヶ月で治療が終了します。
※もちろん矯正治療を行わない場合もあります。

適応範囲もせまく、また手技も煩雑になりますから、現実問題なかなか適応症がみつからないのが
正直なところですが、インプラントを検討する前に、不必要な歯を削ってしまう前に1度は検討しましょう。

 

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